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遺産のうち、金融資産について早期に遺産分割協議を完了させ、評価額に争いのある自宅不動産について遺産分割調停手続を活用した事例

2022.12.26

相談事案

依頼者は、横浜市に住む40代の男性の方でした。依頼者には5歳年下の弟がいましたが、弟は妻子とともに、大阪市内にある二世帯住宅(土地が父親所有で、建物が父親名義部分と兄名義部分の2棟存在する)で父母と同居していました。

依頼者の父親は今から10年ほど前に亡くなり、母親も先日、病気で亡くなりました。母親は、父親の死亡に伴い、父親名義であった大阪市内の自宅(土地と建物のうち父親名義部分)と、父親が持っていた1億円を超える預貯金や有価証券類を取得しました。

母親の死亡に伴い、依頼者は、弟との間で、母親の遺産について分割協議する必要がありましたが、遠方に住んでいることや、父母や弟とはこの十数年来、連絡を採っていなかったため、弟との交渉すべてを当事務所に依頼されました。弟の方にも、すでに弁護士代理人が就いており、代理人間で交渉を進めていくことになりました。

解決方針

当事務所は、まず、弟の代理人弁護士に連絡を採り、遺産分割の方法について協議を進めました。弟と依頼者とは、感情的対立はあったものの、お互い、生前に母親から生前贈与を受けていたり、療養看護その他特別の寄与をしたといった事情は特になく、母親の遺産を法定相続分に従って、弟と依頼者とで2分の1ずつ分割することについてはすんなりと合意ができました。

ところが、二世帯住宅である大阪市内の自宅の評価額を巡り、交渉が難航しました。依頼者側が大手不動産業者による査定額に基づき、その2分の1の代償金を支払うよう弟側に求めたのに対して、弟側は、二世帯住宅のうち父親名義部分の建物は今後活用する予定がなく、また、弟名義部分と父親名義部分が不可分一体の構造となっていたため、土地の更地価格から建物全体の解体工事費を控除した金額をもって評価額とすべきと主張したためです。

遺産分割協議が難航したため、母親の相続税申告・納付の期限も近づいてきました。当事務所の計算では、未分割で申告するにしても、依頼者は約500万円の相続税負担が発生することになりますが、その納税資金の確保の目途も立ちません。

そこで、金額や分割方法に争いのない母親の金融資産1億円について、依頼者と弟との間で2分の1ずつ分けるとの内容で遺産分割協議を早期に完了させるとともに、評価額に争いのある大阪市内の自宅については、依頼者側から遺産分割調停を申立て、不動産鑑定士の鑑定評価を利用することで、解決へと導く方針を採りました。

結果

この方針について、弟側の代理人も理解してもらえ、母親の金融資産(約1億円)について、遺産分割協議書に双方の署名押印を揃えることができたため、依頼者は相続税申告期限までに預貯金等の解約を済ませ、約5000万円を取得するとともに、期限内に相続税500万円を納税することができました。

大阪市内の自宅に関する遺産分割調停は、不動産鑑定士の選任や鑑定評価に時間がかかったため、申立てから1年半が経過してようやく成立するに至りました。鑑定結果は、自宅不動産のうち、土地については、母親の使用借権を考慮して更地価格から1割減額とする、建物については、母親名義部分の固定資産税評価額をもって評価額とするとの内容でした。その結果、自宅の評価額を3000万円とし、弟が自宅を取得する代わりに、依頼者は代償金1500万円を取得するとの調停条項で決着しました。

担当弁護士のコメント

遺産分割は、本来、被相続人の遺産全体について一体的な解決をするのを原則としますが、事案により、特定の遺産についての一部分割を先行したほうが望ましい場合もあります。

本件においても、遺産全体についての一体的解決に拘っていたとすれば、最終的な決着が着くまで、依頼者は遺産を一銭も取得できず、相続税の納税やその他の面においても多大な不都合を被ってしまう所でした。まさに、一部分割が望ましい典型例であったと言えます。

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