初回相談は何分でも無料

06-6556-6613

受付時間:9:00~20:00 (土曜対応)
相談時間:9:00~18:00 (夜間・土日応相談)

遺言を使って節税する

相続税の納税義務を負うのは、原則として、相続又は遺贈(死因贈与を含みます)により財産を取得した個人及び生前贈与により相続時精算課税の適用を受ける財産を取得した個人になります(相続税法1条の3第1項)。

  もっとも、被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した者及び相続時精算課税適用者の全員について、各々,課税価格を計算し、その合計金額が基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の人数。相続税法15条。)を超えない場合には、相続税の申告・納付は必要ありません。各人の課税価格の合計額が基礎控除額を超える場合にのみ、相続税の申告義務が発生します(相続税法27条1項)。

  相続又は遺贈により財産を取得した者及び相続時精算課税適用者の課税価格は、次のようにして計算します。まず、①その者が相続又は遺贈により取得した財産(相続税法3条に定める相続又は遺贈により取得したとみなされる財産を含みます)及び相続時精算課税の適用を受ける財産の合計額を計算します(相続税法11条の2、21条の15)。もっとも、②相続税の非課税財産とされている財産の価額は①において算入しません。例えば、墓地・祭具、死亡保険金や死亡退職金の一定金額までの部分などがこれに該当します(相続税法12条)。そして、①の金額から、③被相続人の債務及び被相続人に係る葬式費用のうち、その者の負担に属する部分の金額を控除します(相続税法13条)。さらに、④その者が相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けたことがある場合には、当該贈与により取得した財産の価額を加算します(相続税法19条)。

  このようにして、各人の課税価格を計算しますが、前述のとおり、その合計金額が基礎控除額を超えない場合には、相続税は課されず、申告も必要ありません。各人の課税価格の合計金額が基礎控除額を超える場合にはじめて、相続税の申告が必要となり、その超える部分が相続税の課される遺産の総額(課税遺産総額)となります。

  基礎控除額は、前述のとおり、3000万円+600万円×法定相続人の数です。この法定相続人の数には、相続放棄した者の数も含まれます(相続税法15条)。

  • 相続税額の計算方法

各相続人や受遺者等が納付すべき相続税額は、各人の課税価格の合計金額から基礎控除額を控除した残額(課税遺産総額)を、法定相続人が法定相続分に応じて取得したと仮定して相続税の総額を計算し、その相続税の総額に、各人の課税価格が課税価格の合計金額に占める割合を乗じて計算した金額となります(相続税法16、17条)。

  すなわち、まず、相続税の総額を計算するための第1段階として、課税される遺産の総額を計算します。課税される遺産の総額とは、各人の課税価格の合計金額から基礎控除額を引いた金額になります。

  次に、第2段階として、上記の課税される遺産の総額を法定相続人が法定相続分に応じて取得したとすれば、各法定相続人の取得金額がいくらになるかを計算します。

  そして、各法定相続人の取得金額に所定の税率(相続税法16条)を乗じて、いわば法定相続人ごとの仮の相続税額を計算するのが第3段階となります。

  最後に、法定相続人ごとに計算された相続税額を合計した金額をもって、相続税の総額とします。

  このような課税方式を法定相続分課税方式といいますが、累進課税方式を採用する我が国の相続税法においては、特定の相続人が多くの遺産を取得した場合であっても、相続人が法定相続分に応じて取得した場合であっても、相続税の総額は同額となり、遺産配分の方法によって相続税の総額に差が生じないという点が、この方式のメリットということができます。

  各人の相続税額は、以上のように計算した相続税の総額に、各相続人・受遺者の課税価格の課税価格合計金額に占める割合を乗じて算出します(相続税法17条)。但し、被相続人の配偶者、父母、子、代襲相続人である孫以外の者については、この算出額に20%を加算した金額が相続税額となります(相続税法18条1項)。

  そして、各人の相続税額から下記の各控除額を控除した残額が、各人が実際に納付すべき相続税額となります。

・贈与税額控除(相続税法19条)

・配偶者の税額軽減(相続税法19条の2第1項)

・未成年者控除(相続税法19条の3)

・障がい者控除(相続税法19条の4)

・数次相続控除(相続税法20条)

・外国税額控除(相続税法20条の2)

・相続時精算課税に係る贈与税額の控除(相続税法21条の15第3項)

 

(3)相続税を考慮した遺言書の作成

 遺言者は、相続人らの課税価格の合計額が基礎控除額を超える見通しの場合に、相続税を考慮した遺言書を作成すべきと言えます。相続税の税額軽減のための様々な特例措置が制度上認められていますが、これらの特例措置は、遺言の内容をどのようなものにするかによって、その適用の有無・範囲が変わってくることになるからです。

以下では、遺言書を作成する際に考慮すべき代表的な相続税の特例などについて、説明いたします。

〇小規模宅地の特例の考慮

  相続開始直前において被相続人等の事業又は居住の用に供されていた宅地等については、相続人等が事業又は居住を継続する等、一定の要件のもと、宅地等の評価が一定の限度面積の範囲まで、最大80%減額される特例(小規模宅地の特例)が受けられます(租税特別措置法69条の4)。一般に、宅地は遺産の中でも最も高額になりがちな財産の一つであるところ、その評価額が最大8割減額されることになるので、小規模宅地の特例の適用により、絶大な節税効果が見込まれることになります。

  但し、相続税の申告期限までに遺産分割が未了の宅地等については、この特例の適用を受けることができません。未分割の状態のまま相続税の申告期限を迎えた場合には、いったん、この特例の適用なしで計算した相続税額で申告・納付しなければなりません。

  したがって、事業用又は居住用の宅地等については、遺言により、事業又は居住を継続する者に相続させると定めておくことが、相続税対策の観点から、非常に重要となります。

〇配偶者の税額軽減制度の考慮

  配偶者の税額軽減制度とは、被相続人の配偶者は、遺産の形成に寄与していることが多く、また、配偶者自身の相続後の生活保障を図る必要があることに鑑み、配偶者が相続により財産を取得した場合に認められる大幅な税額軽減措置のことを言います(相続税法19条の2第1項)。

  具体的には、配偶者が相続による取得する財産の課税価格が1億6000万円以下であれば、配偶者の納付すべき相続税額はゼロになります。また、配偶者の取得する財産の課税価格が1億6000万円を超える場合にも、相続税の総額にその者の法定相続分を乗じた金額が控除されます。

  但し、小規模宅地の特例と同様、相続税の申告期限までに配偶者の取得する財産が決まっていない場合には、この特例の適用なしで計算した相続税額で申告・納付しなければなりません。したがって、遺言により、配偶者がどの財産を取得するかを定めておくことが、相続税対策の観点から、非常に重要となります。

〇二次相続までのトータルでの相続税負担の考慮

  孫に財産を取得させる旨の遺言は、本来、被相続人から子への相続、子から孫への相続という、2回の相続を経るべきところを、1回の相続により財産承継を実現することができることから、しばしば活用されます。

もっとも、被相続人の配偶者、父母、子、代襲相続人である孫以外の者については、通常の相続税の算出税額に20%を加算した金額が相続税額となります(相続税法18条1項)。仮に孫が被相続人の養子となっていたとしても、代襲相続人となっていない限り、相続税は2割増しとなります。

また、前述の配偶者の税額軽減措置に頼りすぎて、配偶者のあまりに高額な遺産を相続させる旨の遺言を作成してしまうと、被相続人が死亡した際の相続税額は減らすことができますが、将来、配偶者が死亡した際の相続税負担が大きくなってしまいます。

被相続人死亡時、配偶者死亡時と、相続税を二重に課税される可能性を考えると、一次相続において、単純に配偶者に多くの遺産を相続させればいいとはいえず、配偶者死亡時の2次相続の際の相続税も考慮したトータルの相続税負担を考える必要があると言えます。

また、先ほどの相続税が2割増しとなる孫への遺贈も、たとえ2割増しとなったとしても、1回の相続税負担で済むというメリットもあり、被相続人から子、子から孫へと2回の相続の場合に比べて、トータルで相続税負担が軽くなる場合もありえます。

個々のケースによって異なりますので、遺言書を作成する際には、1次相続と2次相続の相続税額をよくシミュレーションした上で作成することが求められます。

(4)遺言書と異なる内容の遺産分割をした場合の課税関係

 遺産に属する特定の財産を共同相続人の1人又は数人に承継させる旨の遺言(「特定財産承継遺言」と言います。)があり、遺言執行者が指定されている場合に、相続人らが、遺言の内容を知りつつ、遺言執行者の同意なしに、その遺言と異なる内容の遺産分割協議を成立させた場合の効力においても、私的自治の原則に照らして有効であると考えられます。

  まず、最高裁平成3年4月19日判決(判例時報1384巻24頁)は、遺言書において、特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言者の意思が表明されている場合について、遺言書の記載から、その趣旨が遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情がない限り、遺贈と解すべきではなく、民法908条にいう遺産分割の方法を定めた遺言であるとしたうえ、このような遺言がなされた場合、何らの行為を要せずして、被相続人の死亡時に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継されるものと解すべきであると判示しています。

  そして、東京地裁平成13年6月28日判決(判例タイムズ1086巻279頁)は、特定の遺産を特定の相続人に相続させる趣旨の遺言があり、遺言執行者が指定されている場合に、相続人らが遺言執行者の同意なしに、遺言と異なる内容の遺産分割協議を成立させた事案において、前述の平成3年最高裁判例を引用し、当該特定の遺産が、遺言により特定受遺者に当然に帰属していると述べた上で、当該遺産分割協議は、当該特定の遺産について、特定受遺者が遺言によって取得した取得分を相続人間で贈与ないし交換的に譲渡する旨の合意を定めたものと解するのが相当であり、その合意は、遺言執行者の権利義務を定め、相続人による遺言執行を妨げる行為を禁じた民法の規定に何ら抵触するものではなく、私的自治の原則に照らして有効な合意と認めることができると判示しました。

  このような特定財産承継遺言の内容と異なる遺産分割協議をした場合の課税関係については、前記東京地裁判決の考え方のように、遺産分割協議が贈与ないし交換の合意であるとして、贈与税ないし譲渡税が課税される可能性があります。これに対して、特定の財産の遺贈を受けた相続人が、遺言の内容を知りながら、これと異なる内容の遺産分割協議を成立させた場合については、特定物の受遺者はいつでも遺贈の全部又は一部を放棄することができると規定されている(民法986条1項)ことを根拠に、自己に有利な遺言の内容を知りながらこれと異なる遺産分割協議を成立させた場合には、特段の事情のない限り遺贈の全部又は一部を放棄したものと認められるとして、遺産分割協議が遺言に優先すると判示した東京地裁平成6年11月10日判決(金融法務事情1439巻99頁)があります。特定財産承継遺言についても、遺贈と異なる取扱いをすべき理由はないと考えれば、この判決の判旨のとおり、遺産分割協議が遺言に優先しますので、通常の遺産分割協議が成立した場合と同様、相続税が課されることになります。

  このように、遺言の内容と異なる遺産分割協議をした場合の課税関係については、複数の考え方があり得るため、いったん遺言書の内容に基づいて相続税の申告を行った後に、遺産分割を行った場合、贈与税ないし譲渡税が課される可能性があります。このような税務上の問題を避けるため、遺言と異なる遺産分割協議は、相続税の申告前に行うのが望ましいと言えます。

(5)遺留分侵害額請求をした場合の課税関係

遺贈や贈与によって、特定の相続人の遺留分が侵害された場合、遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を保全するのに必要な限度において、遺贈、相続開始前1年間の贈与及び相続人に対する相続開始前の10年間にした婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に対して、侵害額を請求することができます(民法1044条)。

  相続税の申告期限までに遺留分侵害額請求がなされ、遺留分権利者・義務者双方で遺留分につき合意が成立すれば、それを前提に、遺留分権利者・義務者双方の課税価格を算出したうえ、それぞれが相続税申告をすれば足りることになります。

  しかし、実際の紛争場面においては、遺留分侵害額の確定に至るまでに相当の期間を要することがほとんどであり、相続税の申告期限(相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月)までに合意にいたることは稀であるといえます。

  そこで、相続税法は、国税通則法の特則として、遺留分侵害額請求を受けた遺留分義務者は、遺留分侵害額の請求に基づき支払うべき金銭の額が確定したことを知った日の翌日から4ヶ月以内に、更正の請求ができる旨を定めています(相続税法32条1項3号)。したがって、遺留分侵害額の意思表示がなされても、相続税の申告期限までに支払うべき金銭の額が確定しない時は、遺留分侵害額請求はないものとして各人の課税価格を計算し、期限内に申告を行えばよく(相続税基本通達11の2-4、平成12年6月23日裁決(裁決事例集59巻262頁)、その後、額が確定した後、更正の請求を行い、税額の還付を受けることができます。

  ここで、相続税法32条1項3号の「遺留分侵害額の請求に基づき支払うべき金銭の額が確定したとき」とは、遺留分侵害額請求に係る紛争が、調停・判決等で解決した場合には、その調停成立や判決確定の時であり(昭和51年1月19日裁決(裁決事例集11巻67頁参照)、また、訴訟上の和解で解決した時は、その和解成立日と解されます(平成10年8月6日裁決(裁決事例集56巻389頁参照)。

  以上のとおり、遺留分義務者は更正の請求を行い、他方において、遺留分権利者は修正申告又は期限後申告をすることができます。もっとも、期限後申告又は修正申告は義務的なものではなく、遺留分義務者と権利者間において、すでに納付した相続税について清算するという処理でも構いません。

  もっとも、遺留分義務者が更正の請求をしたときは、遺留分権利者において修正申告又は期限後申告をしない場合も、税務署長は更正又は決定をすることができるとされています(相続税法35条3項)。

  当事者間での清算という方法を採る時には、例えば、和解を成立させるに当たり、当事者の合意で、相続税の更正の請求や修正申告をしないこととし、税額の調整のための金額を考慮して和解金額を定めることになります。

PAGETOP PAGETOP