自筆証書遺言の財産目録を作成する際、どのような点に留意すべきですか
- 2023.01.27
Q. 自筆証書遺言を作成しようと考えていますが、私が所有している財産は、不動産や預貯金などが多数にのぼります。以前はすべて自書が必要であったようですが、民法が改正されて、財産目録については自書しなくてもよくなったと聞きました。どのような点に留意して作成すればいいのでしょうか。
A. 平成30年の民法改正により、自筆証書遺言の本文、日付及び氏名については引き続き自書を要するとしつつ、自筆証書遺言と一体のものとして添付される財産目録については、遺言者が全頁に署名押印することを条件として、自書することを要しないとしました(新民法968条2項。平成31年1月13日施行。)。
かつての民法968条1項では、自筆証書遺言について、遺言書の内容が遺言者本人の意思に基づくことを担保するため、「遺言者が、その全文、日付及び氏名の自書し、これに印を押さなければならない」との厳格な規定がなされていました。しかしながら、一般に遺言書を作成しようとする人は高齢であり、特に財産が多岐にわたる場合などに全文を自書するのは負担が大きく、自筆証書遺言を利用する際の大きな障害となっていました。
そこで、平成30年の民法改正により、自筆証書遺言の本文、日付及び氏名については引き続き自書を要するとしつつ、自筆証書遺言と一体のものとして添付される財産目録については、遺言者が全頁に署名押印することを条件として、自書することを要しないとしました(新民法968条2項。平成31年1月13日施行。)。具体的には、パソコンで財産目録を作成したり、預貯金通帳の写しや不動産登記事項証明書の写しを添付するなどにより、遺言書作成者の負担が軽減されることになりました。
自筆証書遺言では、「〇〇町にある土地」「〇〇銀行の預金すべて」といった大雑把な記載にしてしまう傾向にありましたが、このような記載では遺産の特定に疑義が生じるおそれがありました。今般の法改正を機に、不動産であれば登記簿謄本記載の所在、地番など、預貯金であれば、金融機関名だけでなく、支店や口座番号など、詳細を特定した形の遺言を心掛けるべきといえるでしょう。