自筆証書遺言の日付は、どのように記載すればいいですか
- 2023.01.27
Q. 自筆証書遺言を作成しようと考えています。自筆証書遺言には必ず日付を記載しなければならないと聞いていますが、遺言書の日付に「平成31年1月」と記載された遺言は有効でしょうか。また、「長男〇〇の誕生日」と記載された遺言は有効でしょうか。
A. 自筆証書遺言をするには、遺言者が、遺言の全文、日付及び氏名を自書し、押印をしなければならないと規定されています(民法968条1項)。
遺言は要式行為であるため、日付の自書を欠く遺言は無効となります。遺言書において、日付は、①遺言者の遺言能力の有無の判断基準時となる点、②前の遺言と後の遺言とが互いに抵触する場合、後の遺言が有効となるところ(民法1023条)、その先後関係の基準となる点において、意義を有しています。
遺言書の日付は、本来、「年・月・日」によって記載するのが原則ですが、これを備えていない場合、遺言書が有効となるかが問題となります。判例は、「大正5年1月」と記載された遺言について、日付のあることは自筆遺言証書の要件であって日付のない遺言は無効としています(大決大5・6・1民録22・1127、最判昭52・11・29家月30・4・100)。学説上も、通説は、日付を欠く遺言を無効とすべきとしています(中川善之助=加藤永一『新版注釈民法(28)』85頁(有斐閣、昭63)。また、「平成○〇年○月吉日」との記載のある、いわゆる吉日遺言も、暦上の特定の日を表示するものとはいえないとして、無効であるとされています(最判昭54・5・31判時930・64)。
以上のような判例・学説の状況からすれば、遺言書の日付に「平成31年1月」と記載された遺言は無効であるといえるでしょう。
これに対して、「年・月・日」を記載していなくても、日の特定が可能であれば、日付を要求する趣旨を達成することができ、有効であると考えられます。判例としても、「40年8月4日」との記載を明治40年8月4日の日付として有効としたもの(大判大4・7・3民録21・1176)や、封筒の裏面に数字で「(縦書きで)26 3 19日」と書かれた記載を昭和26年3月19日の日付として有効としたもの(福岡高判昭27・2・27高民5・2・70)があります。学説も、「還暦の日」「平成○〇年春分の日」といった記載も、日の特定が可能なものとして有効と考えています。
以上のような判例・学説の状況からすれば、「長男〇〇の誕生日」と書かれた遺言も、日を特定することができる以上、有効であると考えられます。