認知症の者が遺言書を作成する際の留意点は何ですか
- 2023.01.27
Q. 認知症を患っている父が、私のために遺言書を残したいと言っています。認知症の父が遺言書を作成しても、遺言は無効になってしまうのでしょうか。有効な遺言にするには、どのような手続きをすればよいのでしょうか。
A. 遺言する者が認知症であるからといって必ずしも遺言が無効となるものではありません。
民法は,満15歳以上で,遺言をするときにおいて能力を有していれば遺言をすることができると規定しています(民法961条,963条)。遺言をする能力を遺言能力といい,一般に意思能力を指すものと考えられております。
そのため,認知症の方でも,症状の程度が進行しており,事理を弁識する能力を欠く状態になっているような場合には意思能力がないものとして,遺言は無効となります。
一方,認知症の方が成年被後見人の場合,次の手続を踏まえて遺言を作成する必要があります(民法978条)。すなわち,①成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復したときに遺言を作成すること,②医師2人以上が立ち会うこと,③遺言に立ち会った医師が,遺言者が遺言をするときに精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記し,署名押印すること,秘密証書遺言の場合は封紙にその旨を記載し,署名押印することです。
認知症の方が成年被後見人になっていない場合は,民法973条の定める上記①から③の手続を経る必要はありません。もっとも,後日,遺言の有効性が争われるリスクを考えますと,これらの手続に従って遺言書を作成する方がよいと思われます。