遺言者の死亡前又は同時に受遺者が死亡した場合、遺言の効力はどうなりますか
- 2023.01.27
Q. 父は弟(私から見たおじ)と妹(私から見たおば)の3人兄弟の長男であり、私は父の長男にあたります。おじには息子が1人、おばには娘が1人います。父は、母や私の相続させる予定の財産以外に、甲土地と乙土地を所有しており、おじに甲土地を、おばに乙土地を遺贈するという内容の遺言書を作成しました。ところが、おばがある時、病死してしまい、その1ヶ月後には、一緒に旅行に出かけていた父とおじが交通事故に遭い、同じ日に死亡してしまいました。父と叔父のどちらが先に死亡したかは分かりません。私のいとこにあたるおじの息子や叔母の娘は、それぞれ甲土地、乙土地を相続することができますか。
A. 遺贈は,遺言者が死亡した時点において遺贈を受ける者が生存していなければ有効となりません。このことを同時生存の原則といいます。この点,民法994条1項も,遺贈する者が死亡する前に遺贈を受ける者が死亡するか,両者が同時に死亡するときは,遺贈は無効となると規定しています。
そのため,この場合,あなたのおばさんがあなたのお父さんより先に亡くなられているので,遺贈が無効となります。また,あなたのいとこにあたるおばの娘さんはおばさんの相続人にあたります。しかし,遺贈が無効となっていることから,おばの娘さんは乙土地を相続することができません。
一方,同時生存の原則との関係で問題となるのが,被相続人と相続人となる予定の者が同一の事故によって死亡し,その死亡の前後が判明しない場合です。この場合,死亡した数人のうち1人が他の者も死亡後もなお生存していたか否かが明らかでないときは,これらの者は同時に死亡したものと推定すると民法に規定されております(民法32条の2)。このことを同時死亡の推定といいます。
そのため,この場合,あなたのお父さんが亡くなられたときにあなたの叔父さんも同時に亡くなられたと推定されますので,遺贈が無効となります。また,先ほどの例と同様にあなたの叔父の息子さんはあなたの叔父さんの相続人にあたりますが,遺言が無効となる以上,叔父の息子さんは甲土地を相続することができません。