遺言執行者を解任するにはどうすればいいですか
- 2023.01.27
Q. 亡くなった父の遺言書において、同遺言書を作成してもらった弁護士の甲氏が遺言執行者に指定されていたことから、昨年、甲氏が遺言執行者に就任しました。ところが、遺言執行者に就任してから1年以降が経過したのに、甲氏は、まだ、相続財産の目録も交付しておらず、執行に着手していません。
A. 遺言執行者がその任務を怠ったときその他正当な事由があるときには,利害関係人(相続人,受遺者等)は,家庭裁判所に対し,遺言執行者の解任を請求することができます(民1019①)。
解任事由
(1) 任務を怠ったとき
ア 遺言執行者は,就任後,遅滞なく,相続財産の目録を悪性して,相続人に交付しなければならず(民1011①),また,その職務に関し,相続人から請求があれば,いつでも事務処理状況を報告しなければなりません(民1012③,645)。
この目録交付や報告の義務は,遺産分割調停において調停委員を通じた間接的なものでは足りないとされる一方(大阪高決平成17・11・9家月58・7・51),相続財産をよく知る相続人の協力が得られないなどの事情で,財産目録の作成が困難である場合などは,必ずしも解任事由に当たらないとされる(広島高松江支決平3・4・9家月44・9・51)など,その時点の事情に基づく判断がなされることになります。
イ 依存執行者は「動産の保管にあたっては善良な管理者の注意,すなわち普通人が通常なすべき注意をもってその滅失,毀損,紛失または盗難を防がなくてはならない」とされています(大阪高決昭33・6・30家月10・7・39)。
したがって,このような義務に反した場合には,解任事由となります。
⑵ その他正当な事由
「正当な事由」があるときとは,⑴の任務懈怠と同程度の,遺言について適正な執行が期待できない事由です。
個別的な判断となりますが,遺言執行者が相続人の一部と緊密な関係にある一方,意見が対立する他の相続人が存在するなどし,職務上の懈怠を指摘されることがなくても,相続人全員の信頼を得られないことが明確な案件である場合(東京高決昭44・3・3判タ244・315)などが挙げられます。
他方で,相続人に対し,自己の名において訴えを提起したり,相続人と遺言執行者との遺言の解釈を異にすることをもって直ちにその解任を請求し得る正当の事由とすることはできないとされています。
解任の手続き
利害関係人(相続人,受遺者等)は,相続開始地(被相続人の最後の住所地)の家庭裁判所(家事手続法209①)に,遺言執行者の解任を請求することができます(民1019①,家事事件手続法39・別表1)。
また,上記解任の申立ての審判が出る前に遺言執行者の職務を停止等させることが必要な場合,利害関係人は家庭裁判所に遺言執行者の職務の停止・代行者の選任を申し立てることもできます(家事事件手続法215)。