初回相談は何分でも無料

06-6556-6613

受付時間:9:00~20:00 (土曜対応)
相談時間:9:00~18:00 (夜間・土日応相談)

株式の遺贈を執行するときは、どのような手続を採ればいいですか

2023.01.27

Q. 亡くなった叔父の遺言書に、叔父が生前に所有していた甲社の株式は私に遺贈すると書かれてありました。私が株式の遺贈を受けるには、どのような手続を採ればいいでしょうか。また、叔父が生前に所有していた乙社の株式については、それを売却した代金について、私と私の兄とに2分の1ずつ遺贈すると遺言に書かれていました。この場合、どのような手続を採ればいいでしょうか。なお、叔父の遺言書には、私が遺言執行者に指定されています。

A. 株式の遺贈の場合も,株式の売却代金の遺贈の場合も,まずは対象とされている株式が存在することを調査する必要があります。そのうえで,株式の遺贈の場合は権利移転手続きを,売却代金の遺贈の場合は株式を公正な価格で売却したうえで,売却代金を受遺者に交付します。

株式の存在を確認する手続き

遺言執行者は,遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有しますので,まずは遺贈の対象となる株式が存在することを調査する必要があります。その際,証券会社や株式会社に対して照会を行う必要もあります。

株券が発行されている場合,遺言者が保管しているのであれば,遺言者の住居や貸金庫などを調査し,証券会社が保管している場合は,証券会社に照会をします。

上場会社の株式については,平成21年1月5日から,株券等電子化(株式等振替制度)が実施され,上場会社のすべての株式につき,株主権の管理は,証券保管振替機構や証券会社等により電子的に行われます。

上場会社の株式の存在確認調査は,それぞれ預託先の証券会社に照会することにより行います。その際の必要書類については,各証券会社に事前に問い合わせる必要があります。

株券府発行の場合には,遺贈の対象となる株式の存在を確認するため,株式払込金領収書や,株式申込書などの資料により調査します。

株式の遺贈による権利移転手続き

株券が発行されている場合には,株券の交付により,株式の譲渡の効力が生じるので(会社法128①),受遺者が株券の交付を受けることで遺贈の効力が生じます。ただし,会社に対して権利を主張するためには,株主名簿の名義書換が必要です(会社130①②)ので,受遺者は,交付された株券をもって会社に対し,名義書換の手続きを行います。

上場会社の株式については,上記の株券等電子化により,株式の移転は,遺言者が証券会社等の開設している口座から,受遺者の口座に株式を振り替えることにより効力が生じます。振替の手続きについては,各証券会社等によって異なるため,事前に確認が必要です。

この場合の株主名簿の名義書換については,振替機関が,振替口座簿の内容に基づき,総株主通知を行うことで行われます。

株券府発行会社の株式の譲渡は,譲渡をするとの意思表示だけで譲渡の効力が生じますので,遺贈の場合も,遺言の効力が生じたときに,株式の遺贈の効力が生じます。ただし,遺贈の効力を会社および第三者に対抗し,株主としての権利を主張するには,株主名簿の名義書換が必要です。

譲渡制限株式の特定遺贈の場合には,会社の株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の承認(会社法139①)がなければ,譲渡の効力が発生しません。そこで,遺言執行者は,会社に対し,譲渡承認請求を行います(会社法136)。包括遺贈の場合には,遺贈の効力は承認手続きを経ることなく発生し,会社の側で受遺者に対する売渡請求(会社法174~177)のみができることになります。

中小企業の代表者が株式を遺贈する場合

中小企業の代表者が保有していたその中小企業の株式を遺贈する場合には,「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(以下本項において「法」といいます。)の施行により,遺贈にかかる株式の価額を,遺留分算定の基礎となる財産の価額に算入しない旨などの合意をすることができます。これは,受遺者が当該中小企業の代表者となり,かつ,議決権の過半数を有することになる場合にできます。

その際には,株式の遺贈に関する手続きに加えて,次のような手続きが必要となります。

① 遺贈にかかる株式の価額を,遺留分の算定の際算入しないこととするなどについて,推定相続人および後継者全員の書面による合意(法4①)
② ①の合意に加えて,当該後継者が後継さとしてふさわしくない行為などを行った場合に推定相続人がとりうる措置について,推定相続人および後継者全員の書面による合意(法4①)
③ ①の合意をした後継者が,合意から1か月以内に合意の要件該当性などについて,経済産業大臣の確認を受ける(法7①②)。
④ ③の確認を受けた後継者が,確認を受けたときから1か月以内に家庭裁判所の許可を受ける(法8)。

この家庭裁判所の許可を得ることによって,合意が効力をもつことになります(法8①・9)

株式の売却代金の遺贈の執行

上場株式の場合,株式の売却は,証券会社等の口座間の振替えによって行います。その際の必要書類は,各証券会社に問い合わせる必要があります。

非上場株式の場合,取引相場がないため,相続税や法人税,所得税の計算の際に用いられる方法などを用いて,できるだけ客観的な価格を算定し,算出された価格を参考に譲渡当事者間で価格交渉をすることになります。

売却が成立した場合,遺言者は,受遺者に売却代金を交付します。

PAGETOP PAGETOP