遺留分とはどのような権利ですか
- 2023.01.27
Q. 私には妻と長男、長女がいますが、長男にすべての財産を取得させる内容の遺言書を作成する予定です。このような遺言書に何か問題はありますか。
A. 妻は4分の1,長女は8分の1の遺留分を有していることから,この遺言によって,両者から遺留分侵害額請求権を行使される可能性があります。
本来,遺言者は,自己の財産を自由に処分することができるのが原則です。
しかしながら,この原則を無制限に認めてしまうと,被相続人とともに生活するなどして,被相続人とともに財産形成をしてきたと思われるような相続人や,相続人に扶養されてきたような方の利益が侵害されることがあります。
そこで,個人の財産処分の自由と,一定の相続人の利益との調整を図るため,一定の相続人に対して,被相続人の財産の一部を留保することを保証する制度として遺留分を認めています。
遺留分を有するのは,「兄弟姉妹以外の相続人」です(民1042①)。したがって,配偶者,子又はその代襲相続人,子らが相続人にならない場合には直系尊属となります。
相続欠格者(民891),相続人の廃除の手続きを受けた者(民892),相続放棄をした者(民939)は相続人ではないので,遺留分権利者とはなりません。
ただし,相続欠格および相続人の廃除がなされた場合には,代襲相続が生じますので,これらの代襲相続人は遺留分権利者となります。
遺留分の割合は,遺留分を算定するための財産の価額に①直系尊属のみが相続人である場合には3分の1,②それ以外の場合には2分の1となります(民1042①)。
相続人が複数存在する場合には,それぞれの相続人の法定相続分に上記①②の割合を乗じて,当該相続人の遺留分の割合を算出することになります(民1042②)。
このように算出された遺留分を侵害されている遺留分権利者は,受贈者等に対し,遺留分侵害額請求権を行使することができます(民1046)。この遺留分侵害額請求権は,形成権であり,権利を行使することによって直ちに金銭支払請求権が発生します。