遺言書の作成方法と留意事項について、教えてください
- 2023.01.27
Q . 遺言にはどのような種類があって、どのように作成すればよいでしょうか。また、遺言書作成の留意点として、どのようなものがありますか。
A. 遺言には,大きく分けて3種類あります。自筆証書遺言(民法968条),公正証書遺言(民法969条),秘密証書遺言(民法970条)です。
自筆証書遺言
自筆証書遺言は,遺言する者がその全文,日付及び氏名を自書し,押印することによって作成することができます。自筆証書遺言のメリットとしては,最も簡単で費用が掛からないという点が挙げられます。一方,デメリットとしては,紛失,偽造,変造の危険や,方式の不備や文言の解釈に問題が生じる可能性があるという点が挙げられます。自筆証書遺言では,自筆によることが要求されており,財産目録等を除いてワープロ等による作成は認められていません。氏名については,氏または名のどちらかのみの記載でもよく,戸籍上の氏名ではない通称,ペンネームでも有効と解されています。押印については,三文判でもよく,押印の代わりに指印でもよいとされています(最判平成元年・2・16判時1306・3)。もっとも,遺言の効力に問題を残さないためには,戸籍上の氏名を用いて実印を使用するのが望ましいでしょう。日付については,自筆証書遺言の日付は、どのように記載すればいいですかに記載しております。
自筆証書遺言の場合は,遺言を執行するために家庭裁判所の検認が必要とされていることにも注意を要します(民法1004条1項)。
公正証書遺言
公正証書遺言は,証人2人以上の立ち合いのもと,遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し,公証人がそれを筆記して遺言者及び証人に読み聞かせ,又は閲覧させ,遺言者及び証人が署名押印し,確認のために最後に公証人が署名押印して作成されるものです。公正証書遺言のメリットとしては,公証人のもとに原本が保管されるので内容が変造されたり紛失されたりする危険がなく,遺言の効力が問題になる危険が少なく,自筆証書遺言と異なり検認の手続が不要であるといったものがあります。一方,デメリットとしては,原則として公証人役場に証人といかなければならない面倒や費用がかかることなどがあります。
秘密証書遺言
秘密証書遺言は,遺言者が遺言書に署名押印し,遺言者がその証書を封筒などに入れて封じて証書に押印した同じ印鑑で封印するものです。その後,遺言者が公証人1人と証人2人以上の前に封書を提出し,自分の遺言書であることと自分の氏名及び住所を申述し,公証人が提出を受けた日付と遺言者の申述を封書に記載したのち,遺言者と証人がこれに署名押印する必要があります。秘密証書遺言のメリットとしては,遺言書の存在を明らかにしながら,内容を秘密にできることが挙げられます。一方,デメリットとしては,遺言書の内容に公証人が関与しないことから疑義が生じる可能性があることなどが挙げられます。
遺言書を作成するにあたっては,できる限り疑義が生じないように法律用語を用いるべきです。例えば,土地を「あげる」と記載するのではなく,「相続させる」または「遺贈する」と記載すべきです。そのほか,相続ないし遺贈する財産をきちんと特定する必要があります。登記されている不動産であれば,登記事項証明書の表示をそのまま記載するのが望ましいでしょう。