自筆証書遺言を作成しましたが、どのように保管すればいいですか。
- 2023.01.27
Q. 私は先日、自筆にて遺言書を作成したのですが、どのように保管しておけばいいでしょうか。法律改正により、自筆証書遺言であっても法務局での保管制度が始まると聞きますが、詳しく教えてください。
A. 自筆証書遺言を作成した場合,秘密の保持や偽造の防止等の観点から,封筒に入れた上で封緘した方が望ましいです。
その後どのように保管するかについては,①遺言者自身が保管する方法,②第三者が保管する方法,そして,法律改正により,③法務局で保管する遺言書保管制度を利用する方法があります。
遺言者自身で保管する場合
遺言者自身で保管する場合は,仏壇やタンス,机の引き出し,自宅の金庫などに保管することが多いですが,遺言者が亡くなられた後に遺言書の存在が判明しないおそれがあるため,次に述べるとおり②第三者が保管する方法か,③遺言書保管制度を利用した方が安全です。
第三者が保管する場合
第三者が保管する方法としては,遺言の内容に利害関係のない,公正な立場の知人,友人,遺言執行者,弁護士等に保管を依頼するのがよいでしょう。また,銀行や信託銀行の貸金庫に預けることも考えられます。その際も,どの銀行や信託銀行に預けたかを相続人や受遺者に知らせておいた方がよいでしょう。
法務局で保管する場合
法務局における遺言書の保管等に関する法律が令和2年7月10日に施行され,同日から自筆証書遺言を法務局で保管する③遺言書保管制度が始まります。かつては,公正証書遺言の場合は遺言書の原本が公証役場に保管される取り扱いでしたが,自筆証書遺言では紛失・隠匿・変造などのおそれが高い状況にあり,また,遺産分割協議後に遺言書が発見されて深刻なトラブルを招く事態が生じうる状況にあるというデメリットがありました。このような問題点を解消するために創設された制度が遺言書保管制度です。
これにより,遺言者は,遺言書を遺言者の住所地若しくは本籍地又は遺言者の所有する不動産の所在地を管轄する法務局(遺言書保管所として指定された法務局に限定されます。)に保管することができます。
遺言書保管所では,遺言書の原本が保存されるとともに,磁気ディスクをもって調製する遺言書保管ファイルに,遺言書画像情報,作成年月日,遺言者の氏名,出生の年月日,住所及び本籍,受遺者・遺言執行者の氏名及び住所などが記録されます。
遺言者の生存中,遺言者以外の者は,遺言書保管所に保管されている遺言書や遺言に関する情報の閲覧・取得をすることはできず,遺言者が亡くなってはじめて遺言書の閲覧や証明書の取得をすることができます。また,遺言者が亡くなった後は,だれでも遺言書保管官に対し,遺言書保管所に関係遺言書の保管がされているか否かを確認することができ,保管されている場合はその事実を証明する証明書の交付を請求できます。
この遺言書保管制度を利用することにより,遺言書の偽造・変造・破棄・隠匿や発見されないおそれを防ぐなど自筆証書遺言のデメリットをほぼ解消することができます。