遺言執行者に指定された者が就職を受諾する場合や辞退する場合、どうすれ ばいいですか。もし、遺言執行者に指定された者が就職の諾否を明らかにしな い場合、どうすればいいですか。
- 2023.01.27
Q. 私は、知人の甲さんの遺言書で、遺言執行者として指定されました。遺言執行者の就職を受諾しようと思いますが、どのような手続きをすればいいでしょうか。就職を辞退する場合は、どのようになりますか。また、もし、遺言執行者に指定された者が就職の諾否を明らかにしないような場合、どのような手続が採られるのでしょうか。
A. 遺言執行者になるのは,遺言書により指定される場合と,家庭裁判所により選任される場合があり,いずれの場合も,就職を受諾する場合には,遅滞なく相続人に対して就職を受諾する旨の通知を行う必要があります。
就職を辞退する場合には,通知は必要ありませんが,通知しておいた方がよいと思われます。
遺言執行者に指定された者が就職の諾否を明らかにしない場合には,相続人やその他利害関係人は,相当の期間を定めて就職の諾否を確答するよう催告することができます。
遺言執行者としての地位の成立
遺言執行者となるべき者が就職に承諾した場合,遺言者が死亡したときにさかのぼって,遺言執行者に就職したことになります。
遺言執行者への就職の諾否は,遺言執行者として指定された者が自由に決めることができ,遺言書で指定されていても,就職しなければならないということはありません。
遺言執行者には,相続人や受遺者もなることができますが,遺言認知の場合や,遺言によって推定相続人を廃除するような場合には,利害が対立することから,遺言執行者にはなれないと解されています。
なお,未成年者や破産者は,遺言執行者の欠格事由となっていますので,これらの場合には遺言執行者に就任することができません(民1009条)。
就職の諾否や通知
遺言執行者に指定された者は,その遺言の内容や遺言者との関係等を考慮して就職の諾否を決めますが,いずれにせよ,その理由を説明する必要はありません。
遺言執行者に就職する場合
遺言執行者に就職する場合には,直ちに任務を行わなければならず,遺言執行者は,任務開始後,遅滞なく,遺言の内容を相続人に通知しなければなりません(民1007条2項)。
この通知は,相続人の1人に行えば足りると考えられていますが,他の相続人やその他の利害関係人との関係を円滑にし,遺言内容の実現に向けて協力を得る観点からは,全ての相続人に対して通知を行うことが望ましいと言えます。
就職の諾否が不明な場合
就職の諾否が不明な場合には,相続人その他の利害関係人は,相当の期間を定めて,就職を承諾するか否かを確答するよう,遺言執行者に催促することができます。これに対して遺言執行者が確答しない場合には,就職を承諾したものとみなされます。
就職を辞退する場合
就職を辞退する場合,通知は不要と解されています。もっとも,⑵のとおり,諾否を明示しない場合には,相続人らからの催告がなされ,期間内に確答しない場合には承諾したものとみなされますから,辞退する場合でもその旨を通知した方がよいといえます。