遺言執行者が選任後すぐに行うべきことは何ですか
- 2023.01.27
Q. 私は古くからの知人である甲の遺言執行者に選任されました。この場合、直ちに行わなければならないことは、どのようなことでしょうか。
A. 相続財産の目録を作成し,相続人やその他の利害関係人に通知をし,相続財産の現況把握と管理,さらに受遺者への意思確認をする必要があります。
遺言執行者に選任されたときは,遅滞なく相続財産の目録を作成し,相続人に交付しなければなりません(民1011①)。
相続人は,遺言書が存在していることや,遺言執行者が選任されていることを知らない場合もあります。
そこで,遺言執行者は,受遺者や金融機関等,遺言者との関係で権利義務を有すると思われる利害関係人に対して,遺言書の写しを添付して遺言執行者に就任したことを通知すべきです。
その際には,遺言執行者には,遺言の内容を実現するため,相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権限があること(民1012①)や,遺言執行者が選任されている場合には,相続人は相続財産の処分や管理ができないことなどを事前に説明しておくことが望ましいと考えられます。
相続財産の現況把握や管理として,遺言執行者は,遺言執行の対象となる財産の存否を確認したうえ,必要に応じて管理者から引渡しを受けるなどする必要があります。
また,遺言執行のうえで必要がある場合には,執行の対象物件を占有している第三者に対し,その引渡しを求めることもできます(大判昭15・12・20民集19・23・2283)。
具体的には次のような措置をとることが考えられます。
⑴ 不動産であれば,全部事項証明書(登記簿謄本)をとり,権利証や契約書等を保管者から引き継ぎ,不動産を実際に見に行って不動産の現況,使用状況等を把握する。
⑵ 預貯金であれば,金融機関や預貯金の種類,金額を調査し,預金通帳や銀行印等を保管者から引き継ぐ。金融機関に対しては遺言執行者への就任の通知をし,通帳がない場合には,残高証明書や取引明細の交付を求める。
⑶ 株券や証券等は,銘柄,酒類,所在,数量等を調査し,保管者から株券や証券,保管預り証,印鑑等の交付を受ける。
⑷ 貴金属等は,種類や数量を調査し,保管者から当該貴金属と保証書,鑑定書等の引渡しを受ける。
⑸ 貸金庫内の保管物については,設置されている金融機関に対し,遺言執行者への就任の通知や,遺言執行者の同意なく金庫の開閉をしないよう通知する。また,鍵は保管者から引渡しを受ける。
受遺者は,遺言者の死亡後は,いつでも遺贈の放棄をすることができ,その効果は,遺言者の死亡時に遡って生じます(民986)ので,受遺者が遺贈の放棄をすると,遺言執行の内容が異なってきます。
そこで,遺言執行者に就任したら,受遺者に対し,遺贈を受けるか否かの意思確認をすべきです。